ベッコウトンボ

5月3日(日) くもり時々晴れ

画像
     ベッコウトンボ成熟♂です。若いうちは♀と同じような色合いです。

画像
      こちらがベッコウトンボの若い♀です。

画像
 ベッコウトンボの成熟した♀です。♀は成熟とともに、くすんだ色合いになっていきます。

  なお、ベッコウトンボと、今回確認したトンボの写真については、「トンボ狂会」に、近日中にアップ予定です。


 「トンボとサッカーの町」、静岡県磐田市にある「桶ヶ谷沼」の「ベッコウトンボ調査」に参加して来ました。
これは、「野路会」(のみちのかい)と、「桶ヶ谷沼を考える会」共催によるベッコウトンボの生息数の調査で、沼本体から激減してしまったベッコウトンボ再生への取組みを、発生数と言う視点で客観評価するとともに、多くの人々に、トンボのことや、自然のことに関心を持っていただこうと毎年開いているもので、今年で23年目になるとのことでした。

 ベッコウトンボは4月~5月の間に見られるトンボで、G.ウィークの頃が発生のピークになるため、毎年4月29日と、5月3日に、磐田南高校の生徒さんたちや、地元住民、遠来の一般の人たちの協力を得て調査が行われています。
 今年も、全国各地からトンボや自然に関心のある人たちがたくさん集まりました。
私たちと同じ区域を担当した青年は、茨城県土浦からオートバイで来てくれました。
 私は、29日に参加予定でしたが、東浦町の(仮称)「自然環境学習の森」づくりの打合せが入り、3日になりましたが、それなりの結果を得て帰ることが出来ました。

画像
 調査開始にあたり、桶ヶ谷沼の現状や、調査の目的、やり方などについてお話しをされる、野路会代表で、桶ヶ谷沼ビジターセンター所長でもある細田先生です。

画像
 ベッコウトンボの日本国内における分布と現状、ベッコウトンボの生態、ベッコウトンボ復活への取組みなどについてお話しされる、両会のメンバーで磐田南高校の福井先生です。
 なお、日本におけるかつてのベッコウトンボ分布のお話しのときに地図を見て気づいたのですが、温暖な気候である広島、和歌山、神奈川が空白地になっていて、反面、雪国・新潟に生息していたことに興味を覚えました。
また、それらのベッコウトンボ生息地の生息環境の共通項が何で、何が変化したかにも興味がありました。 
トンボ学会などで検証が済んでいると思いますので、私も勉強しておきたいと思いました。

画像
画像
        班ごとに分かれた調査風景です。

画像
            結果報告をする福井先生です。
数的には前年と大きな変化はなかったが、F、Cの沼べり側での確認数が増えているのが、今後に期待できそうとのことでした。
 なお、Eの産卵誘導実験地が、29日の調査時点より今回が減っていますが、これは、実験地での産卵のピークが過ぎたことと、実験地で羽化したものが、沼べりなどへ移動しているとの見解でした。
トンボの習性を考えると、この推測は合っていると思います。



〔感想〕
 ベッコウトンボ復活に向け、多くの方々が、長年に渡って地道に努力されていることに、改めて元気をいただくことが出来ました。
一度失ったものを取り返すことの大変さをつくづく思います。 
そして、その原因系の大半が人間自身によるものであることを、残念に思います。
 より良い日本の自然を取り戻し、未来に残すために、今後とも、共に考え、行動して行きたいと思います。
 細田先生はじめ、関係の方々に、感謝申し上げます。



気がかり

 桶ヶ谷沼とは北側の尾根一つ隔てた「鶴ヶ池」は、ベッコウトンボの隠れた多産地でした。
おそらく、日本有数の生息地だったと認識していました。
画像
    「鶴ヶ池」です。桶ヶ谷沼とほぼ同じ規模の池沼で、自然度はこちらのほうが勝っていたように感じていました。

 4月29日に上記ベッコウトンボ調査に行った「カエルの分校」の人たちから、鶴ヶ池では2頭しか確認できなかったとの報告があり、今回、私自身も上記ベッコウトンボ調査を挟んで、午前、午後と現地確認しましたが、1頭だけしか見つからず、とても衝撃を受けました。
 昨年までは下の写真のような密度で、乱舞も見られましたが、過去のものになってしまうのかも知れません。
画像
画像

 何があったのだろうか?
それにしても、急激な変化です。
有害物質が流入したとすれば、魚類などにも影響したと思いますが、ライギョ釣りをしていた方に聞いた限りでは、魚が死んだと言う話しは聞いていないとのことでした。
 
 桶ヶ谷沼でベッコウトンボの生息を妨げている主要因と考えられているアメリカザリガニは、鶴ヶ池にもたくさん生息していましたから、要因にはなっても、主要因ではないと思われます。
 今回は、急激な変化ですから、もっとインパクトのあるものだったと思われます。
冬場の野鳥飛来が多いですから、それらが媒体となったウイルスなども考える必要があります。
卵の段階なのか、ヤゴの段階か不明ですが、ベッコウトンボにとって何らかの異変があったようです。

 全国各地の生息地が消えていった要因の中で、水辺の喪失以外の要因を、再度整理し反映する必要があるように思います。
 桶ヶ谷沼を抱えていますので、地元の方々だけでは手が回らず困難でしょう。
日本蜻蛉学会が中心となり、原因分析と、対策のためのプロジェクトを早急に立ち上げていただけたらと思います。

画像
       写真① 抽水植物の株が、一部崩れてバラバラになっている

画像
      写真② 堆積する植物の間で産卵行動をするベッコウトンボ
                 (2008.4.29 鶴ヶ池)

 例年より水位が25㎝ほど下り、水も腐っている感じでした。
それと、もうひとつ気になったのは、アシやマコモなどの抽水植物の株が、上の写真①でも明らかなように、開放水面との境で、その一部が崩れ、バラバラになっていることでした。 原因は判りませんが、これらも影響しているかも知れません。
なぜなら、昨年までの観察では、開放水面との境付近の、植物が堆積した水深が15cmもあるかどうかの辺り(写真②)でベッコウトンボは産卵していましたから。
 水位は、いつ下がったのだろうか? それは急激だったのだろうか?

 県外のため、たびたび現地へ行くことが出来ないだけに気がかりです。
関係の方々と情報交換しながら、原因究明と復活へのご協力が出来ればと思います。
 水草の上には、例年よりは少ないものの、クロイトトンボがほどほどいて、山際の日影に羽化間もないモノサシトンボが1頭だけ確認できました。
今後、産卵時期を迎えるトンボたちの動向を注視する必要があります。
ベニイトトンボや、コバネアオイトトンボなども含め消えてしまうのでしょうか? 
そうなっては大変です。 何としてもそうさせないようにしたいものです。
 すでに、水質の専門家も解析チームに入っていると思いますが、もしも、入っていないのであれば、友人に、ため池などの水質を長い間診て来た専門家がいますので、お知らせ願います。




〔変わりつつある桶ヶ谷沼〕

 数年前から、沼の北側に、地元の方々のご協力で田んぼが復活しています。
画像
 今回、約一年ぶりに訪ねてみると、沼を取り巻く東側の森が除伐され、風通しと日当たりが良くなっていました。
かつては、観察路から沼はほとんど見えませんでしたから、生態系のためだけでなく、景観的にも良くなっていると感じました。
 かつてベッコウトンボがたくさんいた頃の「里山」を再生することで、沼を取り巻く自然環境を良くし、ベッコウトンボを復活させようとのネライと思います。
ぜひ、そうなってほしいと思います。

 ただ、気がかりもあります。
整理されてはいるものの、除伐された丸太が林内に残されていることと、大径木(老齢木)がほとんど残されていることです。 健康な森にするためには、抵抗力の弱まっている老齢木は整理し、高齢化を避けることも必要です。 
 今、「里山」と呼ばれている、かつての「里山」は、コナラ、アベマキ(地域によってはクヌギなど)などの落葉広葉樹を主にした雑木林です。

 ただ、これらの雑木林は、当時の人々が森の恵を利用して来た結果として出来たもので、当時は、15年前後で伐採を繰り返し、切った木は燃料などに使うため、炭にされたり、速やかに林内から搬出していました。
私も、故郷にいた頃、親や、雇った人たちと、これらの作業をして来ました。
 林床に落ちた枝などは、山主だけでなく、近隣の人たちの大切な燃料として常に持ち出されていました。
落ち葉についても、肥料にするため林内から持ち出されていたのです。
 除伐をしても活用をしなくなった点が、本来の「里山」と、大きな異なる点です。
 桶ヶ谷沼の場合は、それら里山林の遷移が進んで、シイやカシを主とした照葉樹林になっていますが、手入れに当たってのポイントは同様で、
   ①切り倒した木は、早めに林外へ搬出し、炭などで消費してしまう。
   ②森の健全性の維持のためには、樹齢のバランスも図る。
ことが大切に思います。

 池沼の魚類についても、同様なことが言えます。
捕って食べる人がほとんどいないのです。 
結果、限られた空間に大きな魚が増えますので、水の中の生態系はバランスが崩れます。
追い討ちとして、昨今は人為的持ち込み生物が絡んでいます。
ウシガエル、ミシシッピーアカミミガメ、アメリカザリガニ、ブルーギル、コイ、ブラックバス、ライギョなど、次々と種も数も増えているのが、日本各地で見られる現象です。
結果、弱い生物が、生息場所を奪われて行きます。
 その上、「池干し」がほとんどされなくなっています。
 2~3年に一度は、溜ったヘドロを処理し天日にさらすことは、池の水質を保つために有効で、増え過ぎた力の強い生物を間引きすることは、生態系のバランスをとる上でも有効です。
 日本では、長い年月、「ため池」の池干しをし、ヘドロは肥料として、魚介類は食物として有効活用して来ていたのです。…このことは、古文書にも残っていて、昨年10月に奈良市で開かれた 「第3回 ため池シンポジウムinなら」で、神戸大学の高橋さんから報告がありました。

 丸太が林内に残されていると、樹木にとって害をもたらす生物の異常繁殖の場を提供することにもつながります。
「ナラ枯れ」が発生している森林を見ていますと、都市近郊部においては、ボランティアの方々が良かれと思い、一生懸命、大径木を残し、日当たりと風通しを良くしようとしていた雑木林が被害に遭っていることが多く、林内に残されていた丸太が、カシノナガキクイムシの異常発生の産卵床となっていて、発生してしまった「ナラ枯れ」対策に、新たな費用とマンパワーが使われています。
 かといって、搬出は簡単には出来ません。
割ったり、井桁に組んだりして、乾燥を促進させることで、異常発生の産卵床になることを防げますので、ご検討されたらと思います。
 


〔産卵誘導実験地〕

画像
            産卵誘導のための実験地のコンテナです。

画像
 私がいる間も、数頭のベッコウトンボの産卵が見られました。 水面にベッコウトンボが写っているのが判りますか。

 これら以外にも、人工的につくられた池がいくつかあるのですが、そのうちのいくつかが、福井先生のお話によると、植物の根の成長の影響で水が抜けていました。
 みなさんのご苦労を思うと、人もお金も掛かるだけに、支援の輪を更に広げねば!と思います。
 ご協力いただける方は、桶ヶ谷沼ビジターセンターまで、ご連絡願います。
 分校も、ほんの僅かですが、ご協力させていただいています。




"ベッコウトンボ" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント