ベッコウトンボ調査 (桶ヶ谷沼)

4月29日 雨のち晴れ

 『カエルの分校』の恒例になった桶ヶ谷沼でのベッコウトンボの調査会に参加して来ました。
ベッコウトンボ(学名:Libellula angelina )は、環境省の絶滅危惧I類(CR+EN)に指定されているトンボ科のトンボです。
 私たち『カエルの分校』は、珍しいものだけに注目して、それを残そうとしている団体ではありません。
昔なら、ごく普通にいた、なつかしい生きものたちを、少しでも多く次の世代に引き継ぎたいと活動しています。
 桶ヶ谷沼のベッコウトンボについては、ビジターセンターの前所長だった細田先生と、やまねが懇意にしていたことと、調査を通じて得られる知見や、人的ネットワークが、私たちの活動にも役立つために、ご協力させていただいています。

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    (写真の上でクリックすると大きな写真になります。以下同じです。)
 ↑ 桶ヶ谷沼のある谷間です。 正面のハンノキの奥に沼があります。 (ビジターセンター臨時駐車場より)
 写真で見ると、周囲には何もない自然豊かな地域に見えますが、すぐ近くには、自動車メーカーの工場や、生コンプラント、国道一号線バイパスなどがあります。
 朝からの雨も桶ヶ谷沼に着いたときは上がり、何とか調査が出来そうでした。
 やまねは雨男ですが、どなたか晴れ男がいるようです。 

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 ↑ 調査の目的や、やり方を説明する福井所長です。 (4月から細田所長の後を引き継がれました。)

 桶ヶ谷沼のある磐田は、先ほどまで大雨だったとのことで、開始時間を30分遅らせ、例年ですと、沼の近くでやる調査前の説明を、ビジターセンターで行いました。
 このグラフで判るように、日本でも有数のベッコウトンボ生息地と言われた桶ヶ谷沼も、いろんな要因が絡み合い、厳しい状況にあり、色んな手を打ちながら、絶滅を防いでいるのが実態です。
それだけに、毎年の調査が欠かせません。
 私たち『カエルの分校』の5人は、E(実験地)、F(沼べり)地区を調べることになりました。

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 ↑ ベッコウトンボの♀です。

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 ベッコウトンボの若い♂です。 上の写真の♀との違いが判りますか?
お腹の先端の形状が異なります。 (尻尾に見えるのは腹なのです。)

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 ↑ ベッコウトンボの羽化殻です。

 沼本体でのベッコウトンボの激減要因としては、いろいろ考えられています。
ひとことで言ってしまうと、沼を取り巻く、人間の意識と、生活様式が変わったことが、最大要因との見方が出来ます。
 周囲での米作りがなくなり、池干しがなくなったことにより、ヘドロが堆積し、酸欠状態になっています。
後背地開発などによる流入水の減少や、土砂の流入は、陸地化による植物の異常繁茂などを引き起こし、結果、水質悪化や、トンボの産卵に適した水面を狭めています。
 近年の野鳥観察ブームにより禁猟区になったことでの水鳥の増加も、皮肉なことに水質悪化の要因になっています。
 ザリガニや、ミシシッピーアカミミガメ、ウシガエルなどの捕食圧なども関係していると思われます。

 桶ヶ谷沼のベッコウトンボを絶やさないために、それらの要因を排除した実験地が関係者により設定され、実験池や、コンテナによる人為的産卵誘致が図られ、それなりの成果が得られています。

 
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 ↑ ベッコウトンボの飼育・増殖のためのコンテナです。
 コンテナの中に、沼本体の激減要因を取り除いた生態系を創り、産卵誘致をしているものです。
コンテナは、高価なので、『カエルの分校』も、ご協力させていただいています。 

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 ↑ クロスジギンヤンマの羽化殻です。
福井所長によれば、今年は異常に発生しているそうです。 彼らは大きく、羽化の時期も重なりますから、ヤゴの時代や、羽化直後のベッコウトンボにとっては捕食圧となり、脅威です。
 自然は微妙なバランスの中で成立していますから、特定の生きものだけを増やしたいと願っても、中々難しいのです。 かといって、トンボの好きな関係者が、クロスジギンヤンマを排除は出来ないでしょう。
 そして、このことは、クロスジギンヤンマにとっても、沼本体の環境が悪化しているとも見られるのです。
私たち人間の若者が、親元を離れて新天地で暮らそうとするように、生きものたちも、より良い環境で子孫を残そうとします。
 そのための大切な要素は
   ①餌が確保できること。
   ②安心して、休息したり、眠ることの出来る空間があること。
   ③産卵したり、子育て出来る空間があること。
であり、どれ一つ欠けても、生きものは離れていくか、減少していきます。
これは、同じ生きものである人間にも、当てはまることなのです。

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 ↑ 羽化途中のベッコウトンボです。
通常、11時20分くらいの時間帯ですと、ベッコウトンボは羽化を終え、水辺を少し離れた草原で休息しているのですが、9時近くまでの雨の影響で、気温が低く、羽化が遅れていたようです。
それでも、羽化殻から離れていますので、このまま晴天が続けば、1時頃には飛び立つと思われます。

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 ↑ ベッコウトンボの羽化を覗き込む人たちです。
天候が悪かったことが幸いした、感動シーンでした。

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 ↑ 翅が十分乾き切ってなく、お腹の水分も出し切れてない、羽化間もないベッコウトンボです。

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 ↑ ベッコウトンボの成熟間際の♂です。

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 ↑ ベッコウトンボの成熟した♂も、1頭だけ確認出来ました。

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 ↑ かつて、沼の周りは、うっそうとした照葉樹の森に囲まれていましたが、沼と沼を取り巻く環境を、ベッコウトンボがたくさんいた頃に少しでも近づけようと、除伐が行われ、木の間越しに沼が見えるようになっていました。
これは、これで、一つの試みとして今後に期待が出来ると思いますが…

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 ↑ 伐採され、林の中に置かれた木々です。
 かつて、森の木は、燃料や木材として使われていましたから、伐採された木が、林の中に置かれたままになることはありませんでした。 これは、木の葉や、枝でも言えたことでした。
 伐採した木々を林内に残すことは、次の二つの点で、気掛かりです。
①昆虫などの異常繁殖の温床になり、生態系のバランスが崩れ、新たな問題が起きる恐れがあること。
 →カシノナガキクイムシの異常繁殖に伴う「ナラ枯れ」なども、現代の里山管理が生んだ問題です。
②朽ちて行く過程の木々や木の葉は、雨降りのたびに、水に溶け込み、沼の富栄養化を促進させる恐れです。

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 ↑ 今日の調査で、確認されたベッコウトンボの数です。
直前まで雨が降っていたので、調査時間、やり方などが、これまでと少し変えているので、参考データーとなる模様です。 
 続けて予定されている5月3日のシーズン2回目の調査結果を見て、公式データーにするかが決まるようです。

 29日が雨になるのは、初めてだったとのことでした。
関係のみなさま、ご苦労様でした。 私たちも、いろいろ、学ぶことが出来、有意義でした。 
野路の会、桶ヶ谷沼を考える会、桶ヶ谷沼ビジターセンターのみなさまに、改めて感謝申し上げます。


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 ↑ 桶ヶ谷沼ビジターセンター内の展示です。 今のシーズンは、ベッコウトンボを中心として展示とのことでした。 ベッコウトンボのことや、保護活動などのほかに、生きたヤゴなども飼われ、観ることが出来るようになっていますから、GWや、休日を利用し、出来るだけ多くの方に訪れていただきたいと思いました。


■5月3日の調査結果 (ビジターセンターの話から追記)

 109匹(昨年110匹)が確認され、その約6割が沼の北側で見られた。
 今年の羽化は、昨年と同じ4月5日に始まったが、寒暖差の大きい天候の影響で、その後の発生は例年より遅れ気味。
 沼の北側には、3年前から「ザリガニ侵入防護柵」を設置しているが、今年初めてベッコウトンボの羽化が確認された。 (縄張り行動や、交尾、産卵などは、昨年、やまねも確認しています。)

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 ↑ 「ザリガニ侵入防護柵」を設置した水辺


 

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