若い方々の研究発表

 11月29日

 大阪自然史博物館で、水生昆虫の研究会がありました。
発表者は『若手水昆の会』メンバーの大学生や社会人、学芸員などの方々です。
どの人もフィールドワークを中心に、真摯に取組んでいて、好感が持てました。
中味的にも、示唆に富んだものや、視点が良く、今後に期待が持てるものでした。
昆虫少年が世の中からほとんど姿を消した今、時代を担う若い方々が、その復活に大きな役割を果たしてくれるものと思います。
 観察会ばやりの昨今ですが、子どもたちの場合、身近な自然が少なくなっていることもあり、たまの休みに親に連れられての参加が多く、ほとんどの場合、子どものペースではなく、常に親がくっついていたり、主催者側の都合で移動し、眺めさせられたり、案内者の知識の押し売り?になっていることが多いように感じます。
 子どもは、私たち大人と違い、いろんなものに興味を持ち、いろんな発見をしますので、大人たちは、教えてやるんだなどと変な教育心を持たないで、子どもに任せることも大切に思います。
 始めは名前なんか知らなくとも、何も困りません。
触って、しげしげと眺め、五感を使って生きものや自然に接していれば十分です。名前などは、たずねて来たら、そのとき教えてあげたら良いと感じています。
 子どもは、自分たちのペースで自然の中で伸び伸びと遊んでこそ、本物の自然を観る眼や、自然との付き合い方、同じ生きものである人間についても、少しずつ解って来るように思います。
 「親」の字が示すように、大人は少し離れて、(立ち木の陰から)見守るだけで良いように思います。
子どもは、子ども同士、日常の中で、異年齢の子どもたちと虫を捕まえたり、魚を捕ったりしながら多くを学び、心身ともに育って行くように思います。
「とるのは写真だけ、残すのは足跡だけ…」、そんな自然保護思想が、昆虫や植物採集を悪いこととしてしまい、一般の人の自然を観る目を奪ってしまっていると言ったら言い過ぎでしょうか。
せめて、子どもたちには、好きなように虫を捕まえたり出来るような自然を、身近な所に再生し、本物の自然を伝え、それらを維持するノウハウを伝えることが、豊な自然の中で遊ぶことの出来た私たちの世代の最後の大きな仕事のように感じています。


■中西康介さんの発表
 滋賀県高島市の山間にある耕作形態の異なる水田(慣行、無農薬、減農薬、冬季湛水)における生物相についての研究でした。
画像
画像
画像
画像
画像
画像
画像
画像
 もっとも多種な生物相が得られた「冬季湛水」でしたが、なぜかアカネ属やドジョウは、少なかったとの報告です。
 唱歌「赤とんぼ」に歌われ親しまれて来たアカネ属のアキアカネは、かつては秋の田んぼの風物詩になるほど、たくさんいたのですが、現在は全国各地で激減しています。
彼らの生活史は、かつてのコメ作りの農事暦(田んぼの水管理)とリンクしていて、田植えのため田んぼに水を入れる頃に冬眠から覚めて孵化し、水が張られた田んぼでヤゴとしての幼虫時代を過ごし、稲が元気に育ってきた梅雨時を待って稲につかまって羽化し、暑さの夏を山や高原で送り、秋、稲刈りのために田んぼの水が落とされて泥がむき出しになった田んぼに帰って来て産卵をします。
 同じアカネ属のコノシメトンボなどが、水位のある所で産卵するのとは異なり、そうすることで棲み分けをしているようです。
 ドジョウについては、移動性の高い生きものですので、より良い環境を求めた結果のように思われます。
冬も、なまじ水があることで、氷結したり解けたりを繰り返す環境変化の大きい田んぼよりも、水を落とした田んぼの泥の中や、近くの小川で春を待つのが彼らには良いのでしょう。


■杉尾文明さんの発表
 アメンボたちの季節や環境による変動についての研究でした。
相手が小さいだけに、追跡調査は大変だったと思います。
画像
画像
画像
画像
画像
画像

 あまり取り上げられることの少ないアメンボの研究だけに、今後に期待出来るものでした。


■古山暁さんの発表
 学芸員として昆虫や自然を研究しながら、市民や子どもたちと接している立場での問題意識と普通種の生きものたちを教育にどう活かすかの研究で、報告だけではなく、みんなで考えたいとの問いかけでもありました。
画像
画像
画像
画像
画像
画像
 普通種へ目を向ける大切さを訴えていました。 同感です。
 日本人はブランドに弱い国民性がありますので、絶滅危惧種などは、注目を惹きますが、ともすれば普通種はあまり関心を持たれません。
でもです。絶滅危惧種もかつては居る所には居たのですから、ある意味で普通種でした。
みなさんがお住まいの学区単位で考えていただきたいのですが、絶滅危惧種に指定されていない生物でも、既に消えているものがほとんどではないでしょうか。
 関心を持たれないことが、乱開発などを許し、野山の荒廃を傍観者として放置しているのではないでしょうか。
子どもたちが、家の近くで友たちと遊びながら自然に触れることの出来る自然環境を復活・再生したいものです。


■稲本雄太さんの発表
 大学生だった昨年はベニイトトンボの研究を発表した稲本さんでしたが、社会人になった後も、水生昆虫の研究を継続し、市民参加型水生昆虫調査と言う新たな視点も入れての研究報告でした。
画像
画像
画像
 
画像
画像
画像
画像
画像
画像

 市民や子どもたちが、専門家や学生たちと一緒に調査することで得られる良さや課題まで踏み込んだ報告で、聞かれた方々は、参考になる点が多かったのではないでしょうか。


■懇親会で出た話題から
     ……アルコールが入っていますので本音と思います。

 「昆虫採集は大切だね。」
 「同感同感。」
 「見ただけでは、ほんとのことが判らない。」
 「科学する心も育たない。」
 「捕まえ飼ったりする中で、命のいとおしさも解ってくる。」
 「同感同感。」
 「どこかの野鳥の会が、とるのは写真だけと言い始めた頃からおかしくなった。」
 「同感同感。」
 「結果、日本の自然はよくなったか?ノーじゃないか。」
 「長いレンズ持ってズカズカ踏み込んだり、見た鳥を自慢しあう輩は増えている。」
 「30数年前立ち上げに関わった長野の野鳥の森では、観察者の増加と反比例し、野鳥の数が減り、自責の念に駆られている。」
 「そう言った事例は各地にある。」
 「行政の整備も、やり過ぎが目立つ。」
 「名目は環境整備と言っているが、結果、自然が損なわれていることが多い。」
 「同感同感。」
 「子どもが自由に虫捕りなどが出来るような自然を身近な所に増やさないと。」
 「そうそう、普通種のほうが、子どもは興味を示すし、捕まえたら夢中になる。」
 「数がいることで、眼に留まり捕まえ易いからで、子どもは捕まえることに夢中になる。」
 「イモリなんかは大人気。」
 「カエルやオタマジャクシも。」
 「確かに。」
 「そんな場所が身近にあることが大切。」
 「観るだけ、楽しむだけから方向転換しないと、より良い自然を復活させるためには汗をかかないと。」
 「里山を守れとか、保護せよと声高に言う人は多いが、一緒に保全作業をしようと言うと、いなくなる。」
 「確かに。」
 「放置された田んぼや山はいくらでもあるので、それを活かすべき。」
 「Iさんや、二人のYさんは、それらを早くから実践されている。」
 「俺たちの世代の責任でもあるので、やり残したままにしたままではと思っている。」
 「それを若い人に伝え、引き継いでいただく。」
 「確かに。」
 「保護せよ、開発反対と叫ぶだけでは何もよくならない。」
 「同感同感。」
 「近頃のNHKは配慮がない。世界で始めて撮影に成功しましたと、必要以上に詳しく放映している。」
 「結果、各地で荒らしが起きている。」
 「以前のNHKは、見識があった。今は、視聴率に走っている感じ。」
 「同感同感。」
 「うちのフィールドも荒らしに遭った。」
 「タガメなんては気の毒な状態だ。」
 「新城も大変だった。」  (NHKが、タガメの生息地や生態を詳しく放映し過ぎたため、結果、荒らしが起きた。)
 「赤とんぼが減ってしまった。」 (アキアカネなど)
 「圃場整備による乾田化や、コメ作りの農事暦とアキアカネの生活史のズレなどが効いているようだ。」
 「最近の調査ではフィプロニルなど(育苗箱施用殺虫剤)の影響が出てきている。」
 「海外では使用禁止になっている国もあるが、我が国では規制がない。」
 「稲も機械植えが主流なので、影響は大きい。」
 「減反政策や、耕作放棄田の増加も影響している。」
 「転作や、田んぼにコスモスや菜の花を植えたりする市民運動も、赤とんぼたちを追いやっている。」
 「確かに。」
 「みんなよかれと思ってやっている。」
 「人間のことしか考えてないのが残念。」
 「同感同感。」
 「残念ながらアキアカネなどは絶滅危惧種の仲間入りも近い。」
 「博物館も、いろいろ工夫し、努力をしているが、子どものリピーターが少ない。」
 「博物館に限らず、里山での自然体験などでも同じ。」
 「親に連れられて来ているからなのと、中学になると忙し過ぎる。」
 「学校の授業で来たときなど、子どもたちは一生懸命に生きものを観たりしたりしているが、ホールのソファーで寝ている先生も居る。」
 「先生方も忙しいから、たまには、横になりたいのだろう。可哀そうだよ。」
 「今の小学校は女の先生がほとんどなので、虫は見るのも嫌の人が増えていて悲しい。」
 「自然史博物館を来館者の数で評価してはいけない。」
 「同感同感。」
 「自然に触れたり、自然体験をした子どもは、子どもの人生にプラスになる。」 
 「同感同感。」
 
 


  以下省略 (記憶も??です。)
 
 なお、メンバーの中には、タガメの研究者のH水族館のIさんもおられました。

 懇親会も含め、有意義な一日でした。


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック