久々の恵那山

 10月24日(土)
山の仲間たちと、久々に恵那山(2191m)へ行って来ました。
恵那山は、岐阜と長野の県境の山ですが、私たち愛知県三河の人間にとっては、家や学校から眺めることの出来る、なじみの山です。
ちなみに私の家からは直線で62Kmの距離にあります。
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 7:50、広河原登山口手前1.5Kmほどの駐車スペースに着きました。
既に30台ほどの車が駐車されていて、私たちも含め、その9割ほどが他県ナンバーで、宮城、新潟、群馬、熊谷、柏、多摩、横浜、山梨、金沢、福井、姫路、山口、大分ナンバーなどがありました。
恵那山は、深田久弥の「日本百名山」に入っていますから、その影響と思われます。
25年ほど前までの恵那山ではなかった現象です。
 遠方の方は、各地の山を登りながらのドライブと山行を楽しんでいると思われます。
遠くから来られているだけに、無理することなく、山そのものの良さを味わい、いい思い出をつくって、無事帰えられることを願います。
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 広河原付近の紅葉です。
太古の昔より、崩落を繰り返して来た本谷川と周辺の山々ですが、砂防ダムが出来てしまったため、下流への土砂の流れが阻害され、このように谷が浅くなってしまいました。
 かつては、素晴らしい渓流が見られたのですが、今は、そのほとんどが土砂の下に隠れ、伏流水となっています。
 この少し上、林道の小さなトンネルを抜けて間もない所が、標高1250mほどの広河原ルートの登り口です。

 広河原の近くでは、砂防ダムの工事が行なわれていました。
砂防ダムは、いくら造っても山の崩落は防げないこと、数年で満杯になること、ダムで土砂が堰き止められることで川本来の機能を失うこと、海への土砂の流出が減るため、海岸線が貧弱になることなどから、ほとんどの場合、造ることに疑問符が付くものですが、日本の場合、多額の税金を投入し、造り続けられています。
 長野県の場合、一時期、脱ダム宣言で、新たに造るのを止めていたのですが、知事が代わったら元の木阿弥になりました。
 土建屋さんにとっては、貴重な収入源と言えますが、危険でもあり、コンスタントに仕事が入るわけではないので、ダムに頼らない地場産業の育成が待たれます。

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 足助の「香嵐渓」など、人間が創り出した紅葉も、それなりの味わいがありますが、自然の中のでは、そんなものと比べものにならない、ハッとするような美しい紅葉に出会うことがあります。
そして、それらが何よりもいいことは、自分の足で辿りついた場合、静かに、その自然を味わえることです。
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 谷合の急斜面にあるせいか、ほとんどの木々は、上へ上へと、まっすぐ伸びていました。
 色とりどりの葉と樹肌が、何んとも言えない調和を見せていました。
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 広河原登山口です。
ここで林道を離れ、本谷川を渡り、急斜面に取り付きます。
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 標高差にして260mほど登ると、唐松と笹の茂る緩斜面に出ますが、展望の効く尾根までは、樹林帯の中を、あと260mほど登らねばなりません。
時々休憩して、呼吸を整えながら登りました。
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 尾根へ上ると、霜の洗礼を受け真っ赤に色づいたナナカマドの実や、黄色や赤く色づいた木々の葉が、私たちの心を癒してくれました。 写真、黄色い葉はイワガラミのようですが、薄紅色の葉はオオバスノキでしょうか?
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 登山口から2時間弱、標高1760mほどの明るい尾根に着きました。
目の前には、南アルプスの大パノラマです。
今回参加の大半の方は、自宅近くから恵那山が見えるにも関らず、登ったことがない方たちでしたから、みなさん感激のひとときでした。
 南アルプスの手前、眼下に見える富士山のような形をした山は網掛山(1132.7m)で、三角点があり、南アルプスや伊那谷の展望台ともなっています。
網掛山の真下を、中央自動車道・網掛トンネルが通っています。
 網掛山の山頂南側には、網掛峠(982m)があり、恵那山の北の登山口ともなっている神坂峠(1595m)と共に、律令時代の「五畿七道」の一つであった「東山道」が通っていたところです。
 熊野古道などよりも古く、歴史がある、厳しい道ですので、地形図とコンパスを持って、チャレンジしてみてください。
観光化されてないだけに、新鮮で静かな山歩きが楽しめます。
園原の月川温泉などをベースに、車を二手に分けて、のんびり歩くのがお薦めです。
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 南アルプス(赤石山脈)の大展望です。
左から、千丈ヶ岳、北岳、間ノ岳、農鳥岳、塩見岳、荒川三山、赤石岳、聖岳、上河内岳、茶臼岳などが確認出来ました。
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 南アルプスの深南部と言われるあたりです。
中央、おむすびのような形の山が黒法師岳(2067m)で、昔から岳人に愛されて来た山です。
深田久弥の「日本百名山」には入ってなかったことが幸いし、今も、その静けさを保っています。
 山頂には、珍しい×印の一等三角点があります。 シカなども多く、テント近くでも鳴いていました。

 全国各地には、上記「日本百名山」に入ってない素晴らしい山がたくさんありますから、ブランドや流行に左右されず、自分自身で調べ、自分の好み(価値観)と、体力、技術に合った山登りをされたら、登った山がより印象に残り、愛着が出ると思います。

 実は、今回の山行は、月例ではなく番外編でした。
メンバーの中に、「百名山ツアー」を利用し、既に40座ほど登っているご婦人Tさんがいて、私たちのクラブへ来られたとき、登られた山のことが記憶に残ってないことや、恵那山が見える近くに住みながら、これまで登ってないことを知っり、「日本百名山」を目指すのであれば、まず、家から一番近い恵那山を登っておかなくてはと、一年前に企画し、地形図の見方、コンパスの使い方、地形の読み方などを訓練していただき、今回を迎えたのでした。
 「百名山ツアー」では、全国各地の方々との出会いがありますので、Tさんが恵那山の近くに住んでいると判れば、恵那山について、いろいろ聞きたいはずですから、登ったことがないとの返事では、さみし過ぎます。
ピークを幾つ登ったと、山の名前を挙げるだけでなく、出会った人たちとのふれ合いも大切にし、登った山の良さについても、心に残るようになっていただけたらと願います。

 あなた任せの「百名山ツアー」は、便利で、お手軽ですが、自分の力や体調をしっかり掴んで参加しないと、いつかは、自分の命を失います。
 トムラウシの遭難は、ガイドが悪いのではなく、自身のコンデション管理が出来てなかった参加者自身に、原因の大半があるように思います。
 悪天候でも、命を守るのは、ツアー会社でも、ガイドでもなく、自分自身であるとの自覚が必要に思います。
ツアー登山は否定しません。ただ、パンフレットを見て登る山を選ぶのではなく、登りたい山を自分自身で事前研究し、登りたい時期と、ツアーが一致したから参加するようにされるだけでも、心の準備が出来、事前のコンデションづくりも出来ると思います。
 たとえ市民マラソンであっても、マラソンを走ろうとすれば、それなりのトレーニングを積み、自分の力量を掴んでから参加します。
 山は、ひとたび天候が悪化すれば、負荷を掛けている時間が長いことと、落伍したからと拾ってもらえませんから、マラソン以上に過酷になるスポーツであるとの自覚は必要です。

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 展望尾根(1760m付近)を振り返ったところです。
このあたりは、起伏も緩やかで、植生も良く、展望も良しと、いいとこ尽くめですので、広河原ルートで一番のプロムナード気分を味わえる所と言えます。
ただ、冬場や、ひとたび天候が荒れた場合、このような地形は吹きっ晒しになるので、注意が必要です。
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 1800m付近になると、木々の間から中央アルプスも観ることが出来ました。
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 手前の樹林帯の尾根は、長野と岐阜の県境稜線で、恵那山山頂から南へ、島之谷山、恩田大川入山、三階山へと伸び、三階山からは、平谷と旧浪合村(現阿智村)の境界尾根となり、大川入山、治部坂峠、蛇峠山、丸山へと続き、阿南町の日吉へ向かっています。
 このことより、恵那山は、一部で言われる中央アルプス(木曽山脈)南端の山ではなく、三河準平原の北端の山とすることが妥当であると思います。
 三河の台地を潤す矢作川は、その源流部を上記県境稜線とそれに続く山の大川入山であることからも、三河準平原を構成する山とするのが理解しやすいと思います。
 なお、写真をクリックして拡大すると蛇峠山のアンテナ群が確認出来ます。

 写真の山は、左から、蛇峠山(1663.9m)、恩田大川入山(1921.1m)、三階山(1942.7m)と、柳(竜)の奥山(1886m)です。
はじめ、右手の形の良い山を大川入山(1907.7m)と思ったのですが、その後の山座同定の結果、高嶺山の北に位置する柳(竜)の奥山と判明しました。
大川入山の場合、山頂北250mほどにもう一つのピークがあります。
 恩田大川入山から東へ派生する尾根の手前、蛇峠山と同じくらいの位置に見えるのが島之谷山(1805.2m)で、県境稜線上の山です。この山の山頂付近は、地形が複雑ですから、下山のときは、しっかりした方位確認が必要です。

 なお、この山域、特に恵那山~大川入山間は、南アルプス深南部と勝るとも劣らない、とても魅力的な山域ですが、雪積期以外はヤブ漕ぎが強いられることや、樹林帯が多い上に、尾根の形状が複雑な所が多いことなどから、恵那山と大川入山と蛇峠山を除き、積雪期に一部の岳人たちが歩いているだけで、隠れた山域と言えます。
 雪が多く、よく締まった雪積期に、天候に恵まれれば、ツエルトと、雪洞、避難小屋の組合せで、南沢岳から治部坂峠間を歩くことは可能で、私自身、若いときに、延べ5日間かけて、南沢岳~治部坂峠間を二度、恵那山~治部坂間を一度、恩田大川入山~あららぎスキー場間は、道作りなどで、7、8回は歩いています。
ただ、笹の再生力が高いため、翌年行けば元に戻っていました。
年間を通じ、たくさんの人に歩いてほしい半面、あのまま残すことも良いのかなとも思うこのごろです。

 アプローチとしては、ヘブンス園原のケーブルとリフトを使い、神坂峠以南を、じっくり歩くのも良いでしょう。
天候に恵まれたら、所々で、素晴らしい展望が得られます。
体力のあるパーティであれば、山スキーなども楽しめる所もあります。
 野熊山~あららぎスキー場分岐の間は、ヤブ漕ぎと、高度なルートファンディングが要求されますので、地形図とコンパスに習熟していることが不可欠です。
 なお、雪積期のエスケープルートとしては、神坂峠から中津川へ、または、ヘブンス園原経由で園原へ、恵那山頂から広河原へ、あららぎスキー場分岐からスキー場へ下るルートなどが、昔と違い使いやすくなっています。
 帰りは、タクシーを使うか、迎えの車を確保しておくと良いと思います。
各下山口近くには温泉があるので、下山後は、温泉に一泊して疲れた体を癒しながら歩いて来た山を振り返るのも良いと思います。

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 標高2071m、県境稜線を示す道標です。
かつては黒井沢ルートはここまで上っていましたが、現在は標高2000m付近から、西側へ、等高線に沿って巻いています。
 恩田大川入山方面への縦走は、ここから県境稜線を南下し、野熊の池近くを通り、南へ向かいます。
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 標高2100m付近の木の間越しに見た南駒ヶ岳方面です。 手前、笹の山が富士見平で、神坂峠も見えています。
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 「宮標石」です。 このあたりがかつては宮内省(庁)の管轄地(御料林)であった証です。
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 恵那山の一等三角点(2189.8m)です。
角が欠けているのが残念です。
なお、恵那山の最高点は2191mで、山頂小屋の北にあり、三角点周辺と違い、展望が利きます。
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 三角点のある山頂部にあった櫓です。
同行のMさんのお話しでは、登っても、展望は利かなかったとのことです。
と言うことは、櫓を造った目的は何だったのでしょうか?
まさか、小屋の北にある最高点まで行かなくとも、恵那山の最高点を踏んだことにするためのものではないでしょうね。微妙な高さが、その通りと答えているようで、思わず苦笑でした。
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 それでも、三角点のあるところより少し北へ行くと、木の間越しに、南アルプスの聖岳方面が見え、聖と上河内岳の間の鞍部(アザミ平)の奥には、薄っすらと富士山を確認することが出来ました。 (写真を拡大してご覧ください。上記写真はKAさん撮影)
 35年ほど前は、三角点のある山頂部も、360°の大展望が得られ、夏などは、伊那谷と木曽谷側の花火が同時に見れました。
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 恵那山山頂(避難)小屋です。
昔の小屋は、岩山を背にし、周囲を石で囲い、屋根を被せた造りでした。
雪のあるシーズンに来ると、小屋と斜面の境が雪でつながり、屋根の部分には、動物たちの足跡が無数にありました。
 その小さな小屋で、何度か、誕生日を一人で迎えましたが、今となっては、とても懐かしい思い出です。
小屋が新しくなってからも、何度か泊めさせていただきました。
ストーブは、今でも健在のようです。
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 山の楽しみ方にはいろいろあると思いますが、そんな楽しみの中に、自然が作り出す造形との出会いがあります。
みなさん、何に見えますか?
鼻を伸ばした子ゾウのように見え、思わずニッコリした私でした。
大きな耳があったら、なつかしのダンボです。
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 登りのとき気になっていたコメツガの大木です。
倒れ掛かった幹の途中から、新たな命が株立ちになって伸びていました。
人間も、それなりに歳を重ねたら、若い人たちへ任せ、静かに生きたいものです。
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 倒木の根元に、真新しい穴がありました。穴の住人は、何でしょうか?
直径が10cmほどありますので、ムササビくらい大きな生きものと思われます。
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 標高は1760~70mほどです。遠くに重なり合った山並みが見えます。
緩やかで開放的で植生豊なこのあたりは、広河原へ下る尾根の中で一番雰囲気のあるところと言えます。
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 16:02、暗くなる前に広河原登山口へ戻ることが出来ました。
あとは、この橋を渡り、林道を30分ほど歩けば車の所へ戻れます。
 かつて、増水したこの川を渡ろうとして流され、命を落とした方がいました。
谷川は、あっという間に水嵩が変化しますので、無理をしないことです。
雨が止み、1~2時間も待てば、水量も急激に少なくなります。
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 楽しかった山の余韻を引き、静かに歩く仲間です。
足音には、満ち足りた響きがありました。
私にとっても、なつかしの恵那山でした。

 







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